タイトルに惑わされて買ってしまったけど、この本は技術論や社会論ではなく、心理学(社会心理学)に関する本だということにあらかじめご注意を。
著者は、IT業界の技術動向に明るいだけでなく、文化人として多種の知識を持っていると見受けられる。だけど、それが故に、技術動向について踏み込みすぎた解釈を入れすぎているように読める。一応技術者だということになっている私からすると、技術進歩を引っ張る当人たちは、そこまでのつっこんだ思想や解釈を必ずしも持っているとは限らないように思う。心理学的な面の補強などどうでもいいと思っている技術者には無用の本です。
ところどころで著者が突っ走り気味に議論を拡大して進めている箇所がいくつか見受けられる。そんな話について行けないのは、著者の勝手な思いこみが多いのか、それとも私の読解力がないだけなのか。いずれにしても、すべてをまとめている本というよりかは、著者の現段階での研究の様子をスナップ下感じの仕上がりです。
ただ、私には結局、
- 世の中に偏っていない情報(=報道)などない
- 人は信じたいと思っていることのみを信じようとする
- 時と場所が変われば常識(=事実)とされる事柄も変わる
- たとえ科学を用いても正しいか間違っているかを究極的に証明する方法はない
のようなよくある話を元手に、現在のウェブ社会を生きる若者についての考察をし、最近は「我こそが(ナンバーワンではなく)オンリーワンだ」と思いこんでいる若者が増えてきているのではないか、と批判したいだけなんじゃないかと思えてしまう。
まぁいずれにしても、心理学や思想の面でのトレーニングをしたい人向けでしょう。