2022年8月アーカイブ

(Amazonアフィは張らないことにする)

インターネットの情報を検閲・統制するGAFAは、アメリカ政府からの資金が減ったのを機に、半導体を牛耳るTSMC有する台湾とそれを実質支配している中国の言いなりになってしまっている、経済的にも思想的にも市場を支配するGAFAが独占している現状の危険性を暴く、という内容の本になっている。

まじかよGAFAやべーな今すぐ規制してトランプ政権を樹立して中国を排除だ、という思想に染まっている取り巻きでYouTubeチャネルが潤う程度に、「自称保守」の非常にヤバい集団が政治家も巻き込んでネット上でさも正論を吐いているように活動している、という事実を知ることができた点が一番の収穫である。

メタバースこそがGAFA独占を打破するための技術なのだ、ということを言いたかったのだと思う(第5章)が、ビジネス書という前置きをしても、何を主張したいのか全く理解できなかった。Web3でアレ呼ばわりされて回収された本のほうがまともだと断言できてしまう程度には悲しい章になっている。もはやメタバース以前に、ヘタに技術用語を概要レベルで理解させつつ話を無理にでもつなげて誘導し「GAFAは悪」という結論ありきに導いて陰謀論をとなえる本書のほうが先の本よりもはるかに罪が深いと思う。

著者は、短大卒業直後に中国でのビジネスに関わっていい加減さを肌で知ったところが中国嫌いの原点となっているようで、2020年アメリカ大統領選挙でドタバタに巻き込まれ(突っ込み?)アカウント停止を食らったのを契機に、GAFAを中国と同一視して敵認定し、日本の過激な保守思想と絡まり、現在の主張に行き着いたようだ。著者の経歴をちゃんと見てもらえばわかるが、ITビジネスアナリストを自称しているものの、主張する内容は技術的な方面も含めて非常に怪しい。

100ページ「そもそもファクトは一つではない」といいつつ、GAFAの主張するファクトは真実ではない自らの主張が真実なのだ、と自信満々に書いてしまうあたり、ファクトチェックの難しさを全くわかってないのだと思う。突き詰めれば精神論・宗教論に行き着くわけだけど、それを経験してもなお客観的事実に基づく科学教を信仰し続ける人たちの苦悩を考えたことはあるんだろうか。

132ページ「彼らにプログラムなんて書けない」、ビルゲイツをプログラム書けない呼ばわりするのは個人的には見過ごせない。そりゃキャリア中盤以降は自身で書くことなんてなかっただろうけど、ビルゲイツをまがい物呼ばわりするアンタはいったい何者なんだと本気で怒りたくなる。

というわけで、ビジネス書の顔をした陰謀論、しかもかなりトンテモより、そんなものがAmazonでレビュー高評価のベストセラーとして購入できるし、著者もYouTubeチャネルで懐が潤うというあたりに、GAFAの真の意味での怖さを知るわけです、はい。例の回収されたWeb3本のお供として購入したこっちのほうが遥かに闇が深かった...

● 参考サイト
いかがでしたかブログを書いている俺がその背景を考える【追記あり】
https://anond.hatelabo.jp/20190316041332

● 需要と供給の話
・SEO対策したサイトで収益を得たい管理者(A)
・何でもいいから記事を書いて原稿料を得たい記者(B)
・話題のキーワードでググって世間話のネタを得たいユーザ(C)
の三者で成り立っているのでなくならない。

● 供給側の話
私も含め、(A)と(B)が同一人物であると思っている人も多そうだけど、別なことが多いらしい。(A)は、アクセス数さえ増えればいいので、SEO対策のためにも「それっぽい」文章を(B)に求めて発注する。(B)は、話題のキーワードでかつ「それっぽい」文章のために文字数を稼ぐ必要があり、あのような回りくどい中身のない文章が作られる。ゴミサイトを排除するAIを欺くためにも、「それっぽい」文章はそれなりに論理的である必要があるらしく、論理的な文章を量産できる人はそれなりに限られるため、(B)のような記者が必要となる、らしい。

● 需要側の話
一般ユーザは、真実や正確な情報はどうでもよくて、世間話や暇つぶしになればよいので、あのような文章で満足する。世間一般的に、論理的な文章をきちんと読める人は少ないらしく、ましてやその利用目的もあってどうせ斜め読みするので、最低限の品質の文章で事足りる、らしい。

● 高みを目指したい人の都合
真実や正確な情報を効率よく拾いたい人にとって冗長な文章というのは耐え難い。時間こそが貴重なリソースなのに、長い文章を読むのに時間を取られた挙げ句「わかりませんでした」ではブチ切れる。こうして多くの人が目にしているであろうキーワードはググるに値しないものと認識される。結局は、前提知識や分野を絞った検索が必要になるので、そういった用途を求めてSNSやコミュニティへと流れていかざるを得ない。

● 「増殖Webがうざい」話
以前「増殖Webがうざい」という記事を書いた。昔は適当に文章をコピーしてきた程度でWeb検索エンジンを騙せたが、今はそうもいかないので、先の(B)のような記事を書く人が必要となった。ただ、Web検索エンジンを騙せればよいので、機械翻訳を介して自動生成したサイトというのも放置できないほどに増えてきた。記者に記事を書いてもらうやり方ではスケールしないので、この手の自動生成のアプローチは、手法が少しずつ変化していくだろうけど、根本的にはなくならないのだろう。

● その他
文字読めない人のための動画(YouTube)の繁栄、言語(英語)の壁、本当のことなんて信じない・信じたいと思うもののみを信じる、みたいなリテラシーにも繋がる話だけど、そこまで絡めると範囲が広すぎるので、またにしたい。

このアーカイブについて

このページには、2022年8月に書かれたブログ記事が新しい順に公開されています。

前のアーカイブは2022年7月です。

次のアーカイブは2022年9月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

月別 アーカイブ

ウェブページ

Powered by Movable Type 7.9.0