2017年8月アーカイブ

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リファクタリングのあり方を2000年頃に包括的に語った本の実質の改定書。リファクタリングとは何かから始まり、その具体的な取り組み方や典型的なリファクタリングのパターンなどについて広く語っている。

うーん、他の人にとってはどうなのかわからないけど、少なくとも個人的にはこの本のスタイルは嫌いだなぁ。なんというか、綿密なルールを隅々まで作り上げた上で、これはこう・それはそう、とマニュアル的にリファクタリングを適用していく的な。もちろんそう画一的にはいかないところもあるんだけど、それに対しても、論理的にというか文章力で読破しているような。そうまさに「委員長」のような。そのスタイルのせいでどうも個人的に「納得いかない」感じで読み進めている気がした。

Smalltalkを持ち上げつつJava(の1.1)をベースにコードの例を出しているあたりも、新装でもあえてそのままにしたという意図はわかるんだけど、ちょっととっつきにくくしてしまっている点である気がする。Java2レベルの古い知識で止まってしまっている私ですら「ちょっと」と思ってしまう。

あと本書ではオブジェクト指向を全面的にアピールしていて、GoFのデザインパターンの話もちょこちょこ出てくる。GoFの知識なしでも読める程度ではあるものの、著者の意図をきちんと汲み取ろうと思うならばデザインパターンの知識も必要になるとは思う。ただ近年は、あまりオブジェクト指向という感じでもないんだよなぁ。未だにC++やJavaでやってるのならば、そうでもないのかもしれないけど。

コードの「不吉な臭い」を項目化して並べているところ(末尾開きページに一覧がある)あたりは、いざリファクタリング作業をするという場面でターゲットを探す時の作業の目安になってよいかと思う。

と、新装版とはいえ古臭さが否めないので、あえて今更買って読む必要はないかなぁという感じだった。今ならもっと簡潔にリファクタリングかくあるべきと述べた本もたくさんあるしね。

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LSIとしてのGPUを中心にしつつもそれを取り巻く幅広い技術について解説した本。コンピュータグラフィックスの歴史から最先端のGPUの応用まで広く紹介している。著者のHisa Ando氏のシリコンバレーでの実経験を背景とした詳細な内容も特徴となっている。

スプライトからポリゴンへの話やら物理計算的なプログラミングの話やらは想定していたけど、CRTからディスプレイコントローラの話やら、最先端の半導体製造プロセスの話やらまで絡めてくるとは思っていなかった。幅広く同時に深く技術の紹介を入れていくあたりは、さすが安定のHisa Ando氏という気がした。ここまで書ける人はなかなかいない、ライターとしては後藤氏を超えてると思う。

この手の本の想定する読者的には仕方なかったんだろうけど、もう少しパソコン以外のジャンルも充実させてほしかったか。組み込みやスマホの事情やら、最新のディスプレイアダプタ(HDMI,DisplayPortやら非同期フレームレートやら)の事情やらも解説があっても良かったかもしれない。デコーダやらエンコーダやらもかなぁ。CRTのアナログ伝送から話を始めてるんだし。ただ、そうしてしまうと本題の3DグラフィックスやGPGPUからは外れてしまう、というのもわからなくもない。

ただ、ちょっとNVIDIAを持ち上げすぎなところは気にはなった。まぁ確かに業界は今はCUDA一色に近いんだけど、NVIDIA以外が頑張ってるVulkanとかはもうちょっと登場しても良かった気はする。確かにNVIDIAが強いんだけど、もう少し長い目で見たら業界図が大きく変わってる可能性はあるんだし、標準化の話を存在感もって取り入れても良かったんじゃないかと思う。

と、批判的に書いてしまったけど、広く深く技術を解説した良本なのは間違いない。GPUのジャンルを詳しく知りたい人はぜひ読んでほしい。反面、最低限の知識がないと理解するのが難しい項目も多いので、初心者がいきなり読むのは注意が必要かもしれない。

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