2022年11月アーカイブ

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TCP輻輳制御アルゴリズムについての本。インターネットとTCPの位置づけを歴史踏まえながら概要説明し、TCPの輻輳とそれに対処するアルゴリズムを解説し、近年の輻輳対策のトレンドを紹介している。

ほぼタイトルしか見ずに買った私のせいではあるけど、本書はTCPの本ではなくてTCP輻輳の本だった。TCP輻輳制御アルゴリズムの話で2/3くらいを占める。さすがに私も細かいとこはもういいやとなってしまった。読んでて予感はしたけど著者はやっぱりNTT本社研系の人だった。

インターネットのようなノード間通信の延長にあるネットワークでは輻輳他のトラブルに対する制御が極めて難しい、という話はもはや説明するまでもない前提で話が始まるけど、一般人には「輻輳」という用語すら知られていないのが実際なので、このあたりはもっと丁寧に書くべきだったのではと思った。まぁこの本は一般人を相手にしていないから気にしてないというだけなのかもしれない。

本書を読んだ感想として、専門家でもない人が抑えておくべきポイントは、輻輳制御は難しい、Reno CUBIC そして新顔のBBR、広帯域高遅延や無線(ケータイ)をどうするかがトレンド、というあたりまでかなとは思っている。第7章は、成果アピールや予算獲得的な話にしか見えなかったのでスルーで。

というわけで、TCP輻輳制御アルゴリズムに入門したい人におすすめする本。逆に、そうでない人は正直読まなくていいんじゃ、とも思ってしまった。

P107「Linuxにおける輻輳制御アルゴリズムの実装」LinuxだけでなくWindowsやBSDについても触れてほしかった。私は理論上の話ではなくて現実世界の話のほうに興味があるので。

P177「既存アルゴリズムとの親和性」理論屋さんがハマりやすい話なのかなと思った。皆が新しいアルゴリズムに一気に乗り換えるのが理想だけど、現実はそうはいかない、進化論のような生存競争だと他者を押しのけるのが正解だけど、ネットワークだとそれがいいとは限らない。既存アルゴリズムのままの人もそれなりに通信できるように公平性を保つにはどうやればよいのか。

P201「パケットロスのおもな要因はバッファ溢れによるものです」近年は通信機器も高性能化したので、信頼性が上がっている反面、安易にバッファを増やして遅延増加を招いているだけでなく、溢れたときにバースト的にパケロスを起こしてしまう、という実情の話、あまり考えたこともなかったので参考になった。確率的に早めにロスさせたり帯域制御したりして基幹のノードでパケロスが頻発しないように対処したりしているのだろうか。

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