2023年4月アーカイブ

「ソフトウェア・ファースト」読んだ

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IT技術を活用できるように変革をするべきとうったえる本。ビジネスは顧客の利益となるよう常に変化していかなければならないと前置きした上で、IT技術が社会の変革をもたらすからこそ、IT技術を生かしたビジネスモデルやマインドや組織づくりをしていく必要がある、と主張している。

「ソフトウェア」と本書では言っているものの、あまりソフトウェア特有の視点が多くなく、どちらかというとネットワークやシステムづくりも含めたIT技術と主張したほうが本書の論調にあっているように思う。それらは、IT部門や現場だけでなく、管理層や役員も含めた全社員にかかわるような変革をもたらすからこそ、担当者任せにせず、各々がビジネスの進め方を常に見直していくべきで、またそのために、内製化や内製化とはいかなくても自社でIT基盤をコントロールできるような組織へと変化していかなければならない、という主張が特に強調したい点なのだと思う。

ただ、個人的にその主張がいまいち響かなかった。確かに言ってる内容はそのとおりだと思うし、それらをていねいに主張してはいるんだけど、個人的にはそれらが「当たり前のことを言っているだけ」に感じられた。私はかなり前から根っからのソフトウェア開発者(だと思っている人)なので、主張そのものはもう大昔から何度も聞いてきたことの繰り返しにしか思えなかった。

著者は、DEC・Microsoft・Googleという経歴とのことで、根っこのマインドとしては私に近いはずだと思う。そんな著者が、いわゆる日本の大企業を相手にコンサルしていった先に本書のような主張が出るということは、逆に、私や著者が当たり前と思っているそんなマインドが全然当たり前になっていないというのがまだまだ現在の実情なんだろうなというように思う。

というわけで、IT技術がビジネスモデルや組織をどう変えていかざるをえないように追いやっているのかの話を今一度ちゃんと学び直したい人向けの本。逆に、データサイエンティストやAI技術といった新しく盛り上がっているソフトウェア技術がもたらす新たなパラダイムシフト、みたいなのを期待する人はあまり読まなくてもいいかと思う。

P91「本来、自動車は移動のための手段です。」 走る歓び、みたいな主張をするメーカもあり、変革したくない・変革する必要がないという振り戻しが起こっていたりもしていて、象徴的な文章だなぁと思った。

P109「内製化するのは現実的ではないと思う方もいらっしゃるでしょう」 日本の大企業を相手にしたときにこういう主張が必要になるのだろうなと感じた。開発終わっても社員だと切れないとか、多重下請け問題とか、そういうことを言っている間にもはや自部門や自社でやりきるというマインドすら失われてしまった組織や会社も当たり前のように目にしてしまう今日このごろ。

P271「リモートワーク」 この本はコロナの前に書かれた本だからどちらかというと必要性については抑制的だけど、逆に今は著者はどう考えているのだろうかとも思った。人手人材不足も待ったなしになった今の日本だと、皆が平等に働くようなやり方ではなく、アメリカのように少数の猛烈に働く人を中心とした開発体制にでもしないと厳しいのだろうか。

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