(Amazonアフィは張らないことにする)
インターネットの情報を検閲・統制するGAFAは、アメリカ政府からの資金が減ったのを機に、半導体を牛耳るTSMC有する台湾とそれを実質支配している中国の言いなりになってしまっている、経済的にも思想的にも市場を支配するGAFAが独占している現状の危険性を暴く、という内容の本になっている。
まじかよGAFAやべーな今すぐ規制してトランプ政権を樹立して中国を排除だ、という思想に染まっている取り巻きでYouTubeチャネルが潤う程度に、「自称保守」の非常にヤバい集団が政治家も巻き込んでネット上でさも正論を吐いているように活動している、という事実を知ることができた点が一番の収穫である。
メタバースこそがGAFA独占を打破するための技術なのだ、ということを言いたかったのだと思う(第5章)が、ビジネス書という前置きをしても、何を主張したいのか全く理解できなかった。Web3でアレ呼ばわりされて回収された本のほうがまともだと断言できてしまう程度には悲しい章になっている。もはやメタバース以前に、ヘタに技術用語を概要レベルで理解させつつ話を無理にでもつなげて誘導し「GAFAは悪」という結論ありきに導いて陰謀論をとなえる本書のほうが先の本よりもはるかに罪が深いと思う。
著者は、短大卒業直後に中国でのビジネスに関わっていい加減さを肌で知ったところが中国嫌いの原点となっているようで、2020年アメリカ大統領選挙でドタバタに巻き込まれ(突っ込み?)アカウント停止を食らったのを契機に、GAFAを中国と同一視して敵認定し、日本の過激な保守思想と絡まり、現在の主張に行き着いたようだ。著者の経歴をちゃんと見てもらえばわかるが、ITビジネスアナリストを自称しているものの、主張する内容は技術的な方面も含めて非常に怪しい。
100ページ「そもそもファクトは一つではない」といいつつ、GAFAの主張するファクトは真実ではない自らの主張が真実なのだ、と自信満々に書いてしまうあたり、ファクトチェックの難しさを全くわかってないのだと思う。突き詰めれば精神論・宗教論に行き着くわけだけど、それを経験してもなお客観的事実に基づく科学教を信仰し続ける人たちの苦悩を考えたことはあるんだろうか。
132ページ「彼らにプログラムなんて書けない」、ビルゲイツをプログラム書けない呼ばわりするのは個人的には見過ごせない。そりゃキャリア中盤以降は自身で書くことなんてなかっただろうけど、ビルゲイツをまがい物呼ばわりするアンタはいったい何者なんだと本気で怒りたくなる。
というわけで、ビジネス書の顔をした陰謀論、しかもかなりトンテモより、そんなものがAmazonでレビュー高評価のベストセラーとして購入できるし、著者もYouTubeチャネルで懐が潤うというあたりに、GAFAの真の意味での怖さを知るわけです、はい。例の回収されたWeb3本のお供として購入したこっちのほうが遥かに闇が深かった...